一息入れたのも束の間、満を持してK夫人登場

事情を察しているだけに、私は分かったような顔でM・Tに同調することしかできなかった。
網戸の取り付けは無事完了したものの、N・MやスタッフのN・Hに報告もせずに二人で実家のように寝っ転がって一息入れていると、N・Mの妻でN・Hの母親にもあたるN・K夫人(以下N・K)がお茶を運んで来てくれた。
「二人とも、シナガワ区から来たんだって?遠かったでしょ」
 少しクセはあるものの、フランス生まれの夫人は流暢な日本語を話す。N・Mとは国際結婚らしいが、日本に移り住んでかれこれ二十年近く経つという。
「ここは緑豊かなところですね」
 物質的には豊穣過ぎる時代になったとは言え東京にも豊かな自然の憧憬は確実に現存しているのを私は今し方、体感してきたばかりだった。
「奥多摩の方はもっとキレイ。奥多摩はココから、更に西」
 この季節の奥多摩は快適そうだ。足を運ぶだけでちょっとしたバカンス気分が味わえるかもしれない。
都心では幾重にも物やトレンドが溢れ返り生まれては消えてゆき、変化を繰り返し続けるばかりだが、西東京の一帯に広がりを見せる雄大な自然は唯一無二のかけがえのないものとしてこれからも後世に脈々と受け継がれてゆくだろう。http://www.siggly.co